食器用洗剤のポジショニング分析 第5回:ポジショニングマップ例(2)と考察

お皿を洗う、鍋を洗うなど、日ごろ頻繁に使う食器用洗剤。それぞれの「違いをパッとひと目で比較する」ために、ポジショニングマップを使った分析を行いました。

前回(第4回)は、食器用洗剤の5つのポジショングループについて解説しました。今回(第5回)は、別タイプのポジショニングマップ例をご紹介し、そこからどのようなことが考えられるのかを考察してみたいと思います。

食器用洗剤のポジショニング分析:記事一覧

第1回:分析概要について
第2回:ユーザーが重視している機能・効果
第3回:ポジショニングマップの例(1)と表示項目の説明
第4回:食器用洗剤のポジショングループについて
第5回:ポジショニングマップ例(2)と考察 ☜今回

 出典:「ポジショニング分析レポート<食器用洗剤編>」調査実施:2022年6月、全65ページ

今回紹介するのは、個々の製品の“強み”に注目したポジショニングマップです。

言わば、一つの商品に“えこひいき”するような視点で作成しているポジショニングマップですが、そこから今現在の“強み”を伸ばす策や、弱点を強化するアイデアなどを考察することができます。

ここでは、分析対象である食器用洗剤7製品の中で最もシェア(ユーザー数)が多かった「キュキュット」を例に取り上げて説明したいと思います。


目次

1.「キュキュット」の特長まとめ

ポジショニングマップを見る前にまず、「キュキュット」の特長をまとめておきたいと思います。

下記のグラフは、アンケート調査からわかった「キュキュット」の“好意/魅力点”です。「キュキュット」のユーザーに、「気に入っている点」「良いと思っている点」などをコメントしてもらい、独自の 仕分けルールで要素を集計し、多い順に並べています。

調査数が少ないため、数値はあくまでも参考値となります。

「キュキュット」の好意/魅力点として上位に挙がったのは、 「香り(+)」「汚れが落ちる」「油汚れが落ちる」「泡切れ」「泡立ち」です。

 1位:香り(+)・・・「香りが良い」「さわやかな香り」など
 2位:汚れが落ちる・・・「汚れが簡単に落ちる」「汚れ落ちがいい」など
 3位:油汚れが落ちる・・・「油汚れが良く落ちる」「油落ちが良い」など
 4位:泡切れ・・・「泡切れが良い」「泡切れが早い」など
 5位:泡立ち・・・「泡立ちが良い」「よく泡立つ」」など

そして、1〜5位の各項目の数値(青の棒グラフ)を7製品全体の平均(グレーの棒グラフ)と比較してみると、「香り(+)」が全体平均を大きく上回っています(赤い丸印)。このことから「香り(+)」が他の製品に比べて強い特長であることがわかります。

また、上記のグラフ外になりますが、「価格の安さ/手頃感」も他の製品よりも強くなっています。

以上をまとめると、「キュキュット」の特に強い特長は 「香り(+)」「価格の安さ/手頃感」で、これらは他の商品との大きな違いにもなっています。

詳しくはレポート本誌(有料)をご参照ください。「ポジショニング分析レポート<食器用洗剤編>」調査実施:2022年6月、全65ページ

2. 「キュキュット」のポジショニングマップ例

上記を踏まえて、「キュキュット」の“強み”に注目したポジショニングマップ例を見てみましょう。なお、「キュキュット」以外の各製品を示す円には、上から順にA〜Fを割り当てています。

このポジショニングマップでは、縦軸で製品を使用した際に感じられている“メリット・効果感”を、横軸で“製品スペック”に関する要素を比較しています。

【縦軸】
上側が「価格の安さ/手頃感」、下側が「使いやすさ」です。

 価格の安さ/手頃感・・・「価格が安い」「値段が手頃」「安売り」「コスパいい」など
 使いやすさ・・・「使い勝手が良い」「手軽に使える」「簡単」「楽」など

「キュキュット」は「価格の安さ/手頃感」について、7製品中で一番多くの評価を集めました。そのため、縦軸の最も上側に位置しています。

【横軸】
左側が「泡立ち」、右側が「香り(+)」です。

 泡立ち・・・「泡立ちがいい」「よく泡立つ」など
 香り(+)・・・「香りが良い」「爽やかな香り」など(香りに対するポジティブな評価)

「キュキュット」では 「香り(+)」についての評価が7製品中で最多でした。よって、横軸の右側に位置しています。

【吹き出し部分】
「キュキュット」の位置は、 右上の「価格の安さ/手頃感」×「香り(+)」の場所です。これをワンフレーズにまとめたのが、

「香りが良く、価格が手頃」

です。

詳しくはレポート本誌(有料)をご参照ください。「ポジショニング分析レポート<食器用洗剤編>」調査実施:2022年6月、全65ページ

3. ポジショニングマップから見る機会と脅威(考察)

出来上がったポジショニングマップからは一体どのようなことが言えるのでしょう?あくまでもマップの状況のみから考えうる考察の一例ではありますが、記してみたいと思います。

(1)「キュキュット」の強さ

「キュキュット」のポジショニングの強さが印象的でした。「香りが良く、価格が手頃」という特長は、なるほど幅広いユーザーに受け入れられやすそうな要素だと思われます。利用者数が多いのも納得です。

また、マップ上では「キュキュット」の周辺に余白スペースがあり、近接している他社製品がありません。このことから「キュキュット」のポジションは、他社製品に脅かされることの少ない安泰な位置にあることがうかがわれます。

(2)食器用洗剤の“狙い目ポジション

食器用洗剤全体にあてはまる傾向として、今後どのようなチャンスがあるかを探るために、マップの“空きスペース”に注目してみました。“空きスペース”は、“ホワイトスポット”とも言われ、「他に同じような製品がないので、うまくいけば一人勝ちできるかもしれない」というポジションです。

“空きスペース”は、マップ左下の「泡立ち」と「使いやすさ」に寄ったところにあります。

これは、「泡立ちがよくて、使いやすい」とユーザーに認識されている製品が7製品の中では無いことを示しています。

このことから、例えば、「“泡立ち”の良い洗剤を“使いやすい”ボトルに装填する」や「宣伝文句で“泡立ち”と“使いやすさ”を強調する」などが、“空きスペース”を狙うアイデアの一例として考えられます。

また、「製品D(黄色の円)」と「製品F(青色の円)」はこのスペースに近い位置にあるので、“空きスペース”を狙いやすいと思われます。

まとめ

以上が、食器用洗剤の個別の製品の“強み”にフォーカスしたポジショニングマップ例と考察です。製品の現状が確認できたり、今後のチャンスをさぐるヒントとしても使えたりすることがイメージできたでしょうか?

第5回は以上になります(これが最終回です)。

最後になりますが、これまで5回にわたり、食器用洗剤のポジショニングマップ分析について解説してきました。少しややこしい部分もあったかもしれませんが、ポジショニングマップ分析がどのようなものなのか、そしてどのように活用できるのかが、ぼんやりとでも伝われば嬉しく思います。

なお、「他の製品はどうなっているの?」「もっと他のパターンのポジショニングマップを見たい」「調査データを詳しく知りたい」など思われた方は、ぜひ下記のリンクより有料レポートをご活用ください。全20種類以上のポジショニングマップ例を調査結果の詳細とともに掲載していますので、さまざまな視点からヒントを得られることと思います。

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